[ニュースレターINDEX]

ヤマセミ No.16

July 1997


「オオムラサキの森」植樹活動について

村山 暁

 ヤマセミの会では、自然の保護活動を進めるために、自然についてよく知ることを 目的に鳥を中心に観察活動を進めてきました。今回、国蝶でもあるオオムラサキが大島村に生息していることが分かったことから、もっとこの昆虫を増やす活動を通して、自然の回復と共に、次代を担う子供たちへ 自然を残したいと考えました。

 地域の方のご厚意で土地をお借りして、そこにオオムラサキの幼虫の食草である エノキと、成虫が好む樹液が出るクヌギを中心とした雑木を植えることにより、保護以上の自然の回復を図ることを目的として植樹活動をすることになりました。 これからの環境教育は、リサイクルや自然のバランスを保つという観点から、さらに一歩進めて、今まで壊してきた自然をどこまで回復することができるかが問われているのではないかと考えます。

 自然は人間が長い間関わってきてバランスがとれてきました。多様でありながらも 複雑に微妙にバランスがとれていることが最も求められるわけです。ヤマセミの会では、県の事業を利用し、個人会員からの寄付を含めて75万円以上の事業として取り組みます。

 初の試みに、会員はとても緊張していますが、会員以外の地域の方々のご理解とご 協力を特にお願いしたいと考えております。  

むらやま さとる/十日町市立吉田小学校長(ヤマセミの会顧問)


ムカシトンボ採集奮闘記

岩野 道郎

世界中で日本とヒマラヤ地方のみ生息し日本でもその生息地域が極限的であり、「生きているトンボの化石」ともいわれるムカシトンボは、これまで大島村においては幼虫や飛んでいる姿が見られているものの成虫(トンボ)が採集されていないというのがこれまでの記録である。
村山先生自身もムカシトンボの成虫を見たことがないと言われ「大島村では菖蒲高原に生息しているハズ。」と言われた。
このトンボをなんとかヤマセミの会で、願わくは自分の手で最初に採集してみたいと秘かに夢を抱いたのが確か一昨年の秋頃だったかと記憶する。

今まで長い間採集された記録がないことから、生息しているらしい場所をイメージし、それらしい場所に的をしぼった。
トンボの図鑑の説明では春一番、まだ残雪があるころに発生すると記載されているため何とか5月中に探さないと一年間先送りになることを心配し、菖蒲高原に最初に探索のため出かけたのが5月19日であった。
生息しているらしい場所を二回程往復し、幸運にもそれらしい飛んでいる姿を2回見掛けたが、カメラと双眼鏡ではなんの役にも立たず、確認できないまま夕暮れになったので引返す。捕虫網を持っていかなかったのが悔やまれた。
2回目は5月29日、今度は捕虫網を忘れずに持った。1回目と同じ場所を探したが、風が強く、そのうちに雨が降りだす悪天候のため失敗。

そして3回目は6月3日、やや風はあったものの天候はまずまず。
先回の場所を探索、往きの時点でそれらしい姿を見かけるが、先に飛んでいってしまって見失ってしまった。
飛び去った方向をくまなく探したが発見できず残念だが引返すことにした。
途中往きに見つけた場所付近で、水際の草の茎に止まろうとしているらしいコサナエのようなトンボが目に入り草ごと上から捕虫網をかぶせた。
網の中でもがいているトンボを良く見ると、コサナエよりやや大きく、細長い尻尾をイトトンボのように、くねくねと折りまげ、コサナエ特有の胸の部分の黄色いL字型の模様がなく、直線上になっているのがわかった。
まぎれもなく、図鑑でしか見たことがなく、頭にやきついている「ムカシトンボ」である。
「ヤッター!」と思わず心の中で叫ぶ。捕虫網から取り出す手がふるえていたのが記憶に新しい。
時刻は6月3日(火)の午後4時30分であった。まさか本当に採集できるとは思ってもいなかったために三角紙を用意していなかったので背中のリュックのポケットにあった「ヤマセミの会の案内文」をたて半分にして三角紙の代用としてあばれるトンボを静かにおさえおもむろに納めた。まさに記念すべきひとときであった。
それから約10分後に、幸いなことにもう一頭の採集に成功、更にもう一頭に会ったが、二頭で充分と判断し、見送った。

夕暮前に帰宅し、急いで村山先生に電話で報告する。学校から帰宅途中の先生は、わざわざ十日町から我が家に直行され確認していただいた。
「岩野さん、やりましたね!」とお祝いの言葉をいただき、まるで子供のように興奮してしまった。
今回の採集の成功で感じたことは、まずムカシトンボの生息場所が自分の描いていたイメージとマッチしたこと、そして、採集し確認するまではあきらめなかった執念が良い結果をもたらしてくれたものと思う。
菖蒲高原にムカシトンボが生息していることがはっきりした現在、この貴重な生き物とその自然環境を大事にしていかねばならないと思う。

来年は是非、会員の皆さんと一緒に探索に行き、生息している自然の姿をみせてやりたい。

いわの みちろう/ヤマセミの会会長


1997年度 第1回観察会 報告

ハチクマ、ノスリ、サシバ、トビと大にぎわいの自然観察会

村山 暁

菖蒲高原の春の山菜祭りと合わせて自然観察会をヤマセミの会と公民館の主催で行 った。好天気に恵まれ、参加者は16名にのぼり、盛会であった。 ホトトギスやカッコウ、ツツドリが盛んに囀り、托卵される仲間のオオヨシキリ、 ウグイス、モズなども同時に観察できた。直接観察したことはないが、この地でも托卵という子育てが行われているのだろう。

梅雨入り間近の快晴に近い午前中とあって、安定した上昇気流が生じている。ワシタカの仲間が多数出現した。ハチクマ、ノスリ、サシバ、トビとワシタカ三昧であっ た。牧場は草原をなし、ヒバリが盛んに囀る。灌漑用のため池になる荒れた池の底に コチドリが来ていた。わずかな水たまりで水浴びをしていた。路傍には、牧場を切り開いたために入ってきた外来種の植物が多い。セイヨウタンポポ、ヒメスイバ、ヘラオオバコなどはその典型的な植物である。ヒメジョオンがハルジオンに続いて今まさに咲こうとしている。せせらぎにはカワニナがはい、魚が泳いでいる。

ヤマボウシの白がタニウツギのピンクと相まってとても印象的である。また、この近くの沢沿いには、ムカシトンボの成虫が最近確認された。自然が豊かに残っている菖蒲高原も、人が車で入ることにより環境が変わることに は違いない。昔のようにそこに住む人間が自分の生活の糧として山と共存しない限り は…………。


日時
1997年6月8日 日曜日
8:00〜9:30
天候
はれ
場所
菖蒲高原
参加者
村山曉、岩野正敏、小山秀行、小山健太(大島小3)、高橋孝夫、武江和紘(大島中1)、武江朋枝、武田隆一、中村朝彦、中村秋彦(大島中1)、吹山由美子、福井克利、星名信昭、星名敏子、山岸正司、横山照
自然観察会で確認された生物
鳥類
ハチクマ、トビ、ノスリ、サシバ、コチドリ、カッコウ、ツツドリ、ホトトギス、 アオゲラ、コゲラ、ツバメ、ヒバリ、キセキレイ、サンショウクイ、ヒヨドリ、モズ 、クロツグミ、ヤブサメ、ウグイス、オオヨシキリ、ホオジロ、ノジコ、カワラヒワ 、イカル、ニュウナイスズメ、スズメ、ムクドリ
トンボ類
シオヤトンボ、ムカシヤンマ、シオカラトンボ、オツネントンボ、ヒガシカワトンボ
蝶類
サカハチチョウ、ベニシジミ、モンキチョウ、ミヤマカラスアゲハ、ヤマキマダラ ヒカゲ、ヒメウラナミジャノメ、ウスバシロチョウ
植物(花)
タニウツギ、オオバボダイジュ、ヤマボウシ、ホウノキ、サワフタギ  ハナニガナ、ハルジオン、ヒメスイバ、シロツメクサ、アカツメクサ、コウゾリナ 、セイヨウタンポポ、ジシバリ、ツメクサ
その他
カワニナ、トウキョウダルマガエル、魚類


「オオムラサキの森」植樹の打ち合わせ 6月18日 就業改善センター

6月18日、19:30から、就業改善センターで、研修会を開き、植樹計画について打ち合わせた。名称を「オオムラサキの森」とすること等を決定した。
また、岩野会長から採集したムカシトンボのスライドの映写と報告があった。
出席者は、岩野道郎、高橋孝夫、武田隆一、武江新一、吹山由美子、福井克利、山岸正司、武江朋枝、中村朝彦の9名。


植栽地の草刈り 7月6日 「オオムラサキの森」

7月6日、秋葉山の「オオムラサキの森」植栽予定地の草刈りを行った。
ときおり強い雨の降る中、面積約20アールの予定地の背丈を越える草を刈った。
草刈りが終わるころには、雨も止み、植栽地にオオムラサキが飛んできた。飛んできたのは、羽化して間もないのオオムラサキのオスで、ヤナギの樹液を吸うのを近くで見ることができた。参加者は、村山曉、岩野道郎、高橋孝夫、武田隆一、福井克利、山岸正司、武江朋枝、小山秀行、中村朝彦の9名。


新年度計画決定 5月23日 就業改善センター

5月23日、19:30から就業改善センターで、研修会を開き、今年年度の活動計画について協議し下記のとおり決定した。今年度は、観察会とともに、「オオムラサキの森」植樹が重要な活動となる。
出席者は、村山曉、岩野道郎、高橋孝夫、武田隆一、福井克利、山岸正司、武江朋枝、中村朝彦の8名。


1997年度 ヤマセミの会活動計画(観察会・植樹・研修会)
6月 8日(日)8:00〜9:30菖蒲高原、ベルハウス駐車場集合
7月 6日(日)7:00〜11:00植栽地の草刈り、上岡センター集合
7月21日(祝)8:30〜11:30オオムラサキ観察会、上岡センター集合
8月10日(日)8:00〜11:30菖蒲高原、ベルハウス駐車場集合
9月28日(日)13:00〜15:00田麦森林公園、就業改善センター集合
10月 9日(木)19:00〜21:00就業改善センター、文化祭・植樹打ち合わせ
11月 2日(日)8:00〜16:00「オオムラサキの森」植樹、就業改善センター集合
12月 7日(日)14:00〜16:00朝日池、就業改善センター集合
3月15日(日)14:00〜16:00大平・岡、就業改善センター集合


_/_/_/ 編集者より _/_/_/

新年度最初のニュースレターNo.16をお送りします。はやいもので、最初のニュースレターNo.1を出してからすでに3年になります。今回より紙面を刷新しました。多くの投稿もいただき、感謝しています。今年度のメインは何と言っても「オオムラサキの森」の植樹です。7月6日の草刈りでは、オオムラサキを24mmのレンズの最短距離で撮影しました。7月21日のオオムラサキ観察会には、新潟日報社の取材があり、7月23日に写真入りで記事が載りました。(7月26日)(nakamura@ppp.bekkoame.or.jp)


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nakamura@ppp.bekkoame.or.jp

last modified 14-Dec-97