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文/植木 務(上越市大島区田麦在住)

[2009年7月1日]

<蛹騒動3/羽化観察>
 観察会の蝶マニア氏が駆けつけて呉れました。朝から釘付けで見ていた3体目(シャベルに下垂)が蛹から羽化した直後、まだ羽を広げる前でした。立てている裏羽の色・模様・白線の形などをじっくり図鑑と対比、4体目のぶら下がったままの蛹の姿をネット写真と見比べる。先程羽化し飛び発った2体目が羽を広げたデジカメ画像にも見入る。特徴、時期と個体数も勘案、同定は珍しくないミドリヒョウモン。
 理由を聞き私も納得。期待した「ツマグロヒョウモン」でなくて甚だ以って残念至極!いや安堵すべきかも。

<蛹騒動4/ベイツ型擬態>
 幻だったツマグロヒョウモン。この雌は毒蝶カバマダラに色模様がそっくりと云われます。なぜ雌だけが似るのか。「姿」だけでなく「動き」やフェロモンの「匂い」、「光り方」を似せる昆虫もいるそうです。毒蝶によく似せた蛾もいるとの事。
 虫自身が周りの生存競争を見て、強者に似せれば有利だと判断できるのか、自身の意図で自身の生体改造ができるのか、変るには幾世代もの共通認識を継承せねばなるまい、擬態を完成するのに何万年?かかるのか、・・・駆けつけて呉れた蝶マニア氏は静かに云っていました。

<蛹騒動5/完全変態>
 卵・幼虫・蛹・成虫へと似ても似つかぬ姿を経て変態する蝶。蛹になりつつ毛皮を順繰りに脱皮、最後にそれをポトリと落とします。蛹の殻内で体を溶解改変し、新たに生殖機能を備えて空中世界に羽化飛翔、短い最後のつとめの時間を生きます。宿命を荷ない、美しい姿で花から花へと複雑な軌跡を描きながら、今日も田麦の空を舞っています。

(写真は、羽化直後のミドリヒョウモン 羽の裏と表)

 

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